猫の祖先は、アフリカの砂漠地帯で暮らしていたリビアヤマネコです。そのため、猫の体は乾燥した環境でも水分をむだなく利用できるしくみになっており、腎臓はオシッコを濃縮する機能に優れています。猫のオシッコが濃くてクサイのはそのためです。
しかし、一方でこうした体のしくみであるがゆえに、猫は泌尿器系の病気にかかりやすい動物でもあります。オシッコをできる限り濃縮するために猫の腎臓には常に負担がかかり、腎臓が疲れてくると【慢性腎臓病(腎不全)】など病気が表れます。また、濃縮されることでオシッコの中に結晶や結石ができやすくなり、【尿石症】や【膀胱炎】などの【下部尿路疾患(F.L.U.T.D)】が起こりやすくなります。
Q 愛猫が経験した病気は?(n=955)
猫の健康に関するアンケート調査(花王株式会社調べ)
【慢性腎臓病(腎不全)】は高齢猫の死因の上位に入る病気ですし、【下部尿路疾患】によって尿道閉塞や尿毒症が起これば命を落とすこともあります。けれども、「泌尿器系の病気は猫の宿命だから」と、あきらめることはありません。「かかりやすい」ことがわかっているからこそ、日頃から気を配って予防のためのケアを行えばよいのです。
猫の健康のカギを握る「泌尿器の健康」を守るために、毎日の暮らしの中でちょっとした気配りと観察などのケアを行う。それが、"泌尿器ケア"の考え方です。
ケアをすることで、【尿石症】などの【下部尿路疾患】を予防することができます。また、腎臓は一度壊れてしまうと再生させることはできませんが、日頃から猫の腎臓に負担をかけない生活を心がけていれば、腎臓へのダメージをおさえて機能を長持ちさせることができます。そして、それが愛猫の寿命を延ばすことにもつながります。
泌尿器系の病気は猫の宿命… つまり、すべての猫にリスクがあるということ。愛猫の健康と長生きのためには、“泌尿器ケア”は欠かせません。
最近の猫は長生きの傾向。ずっと健康でいてもらうためには飼い主さんのケアが不可欠。
(n=1,280、ペットフード協会2018年)
泌尿器系の病気の予防には、猫がストレスなく快適に排泄できるトイレ環境づくりを心がけることも大切です。
愛猫にとって、「快適なトイレ環境」の条件
監修:井本史夫先生(井本動物病院)
猫のオシッコには健康情報がたっぷり含まれています。トイレのお手入れも、片付けではなく情報収集と思えばやりがいも出てくるはず!「色・量・ニオイ」に変化はないか、日頃からチェックしましょう。
尿石の原因には食事内容が大きく関与しますし、塩分やミネラル、脂肪分の多いフードは腎臓に負担がかかるので、栄養バランスのよいフードを与えることが重要です。にぼしやかつおぶしなどもなるべく与えないように。
食事管理は与え方や量が肝心。食後はオシッコがアルカリ性に傾く傾向にあり、だらだら食べていると尿石ができやすくなるという説があります。また、カロリーオーバーは肥満の原因になるので、適切な摂取カロリーを心がけて。
猫はもともとあまり水を飲まない動物。体の水分量が減ればオシッコが濃縮され、腎臓に負担がかかったり結石ができやすくなったりするので、新鮮な水がいつでも飲めるように工夫します。飲水量が減る冬は特に気配りを。
水を飲ませる工夫
運動不足になるとオシッコが膀胱の中でとどまる時間が長くなり、尿石ができやすくなると言われています。
愛猫と積極的に遊んだり、上下運動できるキャットタワーを置いたりして、運動できる機会を増やしましょう。
肥満で体が大きくなれば、その分、腎臓の負担も増えて老化を早めますし、太って運動不足になると尿石ができやすくなります。避妊去勢手術を受けると太りがちになるので、食事管理と適切な運動で肥満予防の徹底を。
日頃の愛猫の様子を把握できていればこそ、異変のシグナルを見逃さず、トラブルを早期に発見できるのです。スキンシップをしたり、さりげなく眺めたりしながら、愛猫の様子をよく観察しましょう。
"泌尿器ケア"の基本は、飼い主さんによる「デイリーケア」と獣医師による「メディカルケア」のダブルケアです。毎年定期的に血液検査(生化学検査)や尿検査を受けることで、データが蓄積されて比較することができ、症状が表れにくい慢性腎臓病(腎不全)も早期のうちに発見することができます。
泌尿器ケアのためには、3歳頃までは年1回、3~6歳頃までは年2回、6歳以上では3~4回とこまめに尿検査を受けることをお勧めします。