猫の泌尿器のしくみ

猫の泌尿器の構造と働きを、わかりやすく解説します。

 そもそも泌尿器とは 

泌尿器とは、オシッコを作って出す器官の総称で、左右の腎臓、尿管、膀胱、尿道からなります。尿管、膀胱、尿道を合わせて「尿路」といい、腎臓と尿管を含めた「上部尿路」と、膀胱と尿道の「下部尿路」に分かれます。

 オシッコが作られて
排泄されるまで 

「オシッコ」は、血液が腎臓でろ過されてできる排泄物で、ほとんどが体にとって不要な老廃物です。腎臓、尿管、膀胱、尿道がそれぞれ連携し合って働くことで、排尿のシステムが機能しています。

泌尿器の構造(腎臓、尿管、膀胱、尿道)イラスト画像

① 腎臓
腎動脈によって腎臓に送られた血液が、糸球体でろ過される。体に必要なものは再吸収されて血液中に戻り、不要なものがオシッコになる。

② 尿管
腎臓で作られたオシッコを膀胱へ送る。

③ 膀胱
オシッコが膀胱にたまると膀胱壁が伸び、その刺激が脳に伝わって尿意を感じる。たくさんたまると膀胱が縮んでオシッコを押し出す。

④ 尿道
尿道の入口が開いて、オシッコを体の外に出す。

 詳しく知ろう 
(部分別解剖)

腎臓

● 役割

腎臓の主な役割は血液をろ過してきれいにすることで、そのときに取り除いた老廃物やアンモニアなどの毒素がオシッコになります。血液は腎動脈によって腎臓に運ばれ、きれいになった血液は腎静脈によって運び出されて再び体の中をめぐり、不要となったオシッコは体の外に排泄されます。
そのほか、腎臓は血液のpHや血圧を調整し、体内の水分やミネラルの量を調節して、体内環境を一定に保つ大切な役割も担っています。
腎臓は左右に2つありますが、健康な腎臓が1つあれば腎臓の役割を正常に行うことは可能です。しかし、何らかの理由で腎臓の機能が正常に保てなくなれば、老廃物や毒素がうまくろ過できずに尿毒素が血液中に含まれるようになって、体に悪影響を与えます。

● 構造

猫の腎臓の構造 イラスト画像

猫の腎臓は、人と同様にソラマメのような形をしています。
腎臓はさまざまな器官が組み合わさってできている複雑な臓器です。その中で特に重要な働きを果たしているのが、腎小体(糸球体+ボーマン嚢(のう))と尿細管が1本ずつセットになったネフロンという器官で、ここで血液のろ過や再吸収などが行われます。
人では1つの腎臓に100万個以上のネフロンがあり、犬でも40万個くらいありますが、猫では20万個くらいと少なめです。ネフロンは一度壊れてしまうと再生しませんが、健康な状態で働いているネフロンは全体の3割くらいで、1つが壊れたら代わりのネフロンが働くしくみになっています。しかし、正常なネフロンの数も徐々に減少し、残り少なくなることで、慢性腎臓病(腎不全)などのトラブルが起こります。

腎臓のしくみ

ネフロン拡大図(糸球体、ボーマン嚢、尿細管)イラスト画像

・糸球体
毛細血管が糸玉のようにまとまったもの。ここで血液をろ過して、オシッコの元となる原尿が作られる。

・ボーマン嚢
糸球体を包む袋。糸球体から送られてきた原尿は、ここから尿細管へ送られる。原尿には老廃物以外のものもまだ含まれている。

・尿細管
原尿の中でブドウ糖やアミノ酸、ミネラル分の一部など必要なものは尿細管の壁から再吸収され、アンモニアなど不要なものがオシッコとなる。

尿管

左右の腎臓から膀胱へとつながる細い管です。腎臓の蠕動(ぜんどう)運動によって腎盂(じんう)と尿管の接合部が開いて、腎臓で作られたオシッコが尿管を通って膀胱へと運ばれます。

膀胱

膀胱は、腎臓で作られて尿管を通って運ばれた尿を一時的にためておく袋状の器官です。平滑筋という筋肉でできています。自立神経の働きでコントロールされていて、オシッコが空になっているときはしぼんでいますが、たまると膀胱壁が薄く伸びてふくらみます。その刺激が大脳に伝わることで尿意を感じますが、いっぱいになるまでは排尿を抑える指令が出ているのでもれることはありません。膀胱がある一定の大きさまでふくらむと、脳からの抑制の指令が解除されて膀胱の筋肉が縮んでオシッコを押し出します。一般的に、猫の膀胱の許容量は100ccくらいだといわれています。

尿道

膀胱とつながっていて、膀胱の中にたまったオシッコを体の外に排出させるための管です。普段は尿道括約筋によって閉じられていますが、脳から排尿の抑制の指令が解除されると筋肉がゆるんで開くことで、オシッコを体外に出します。

● 性別による構造の違い

オス猫・メス猫の泌尿器の構造図(腎臓、尿管、膀胱、尿道)イラスト画像

オスとメスでは生殖器の構造のちがいから、尿道の形にもちがいがみられます。
オスの尿道は細くてメスよりも長く、カーブしている部分があるうえに先端が細くなっています。そのために、オシッコを勢いよく吹きかけるスプレー(マーキング)をすることができるのです。メスの尿道は太く、まっすぐに伸びています。
このちがいによってオスとメスとではかかりやすい病気のタイプにもちがいが見られます。オスは尿道が細いために結石ができると詰まりやすく、尿石症が重症になる傾向にあります。
一方、メスは尿道が短いため、膀胱に細菌が入りやすく、細菌感染による膀胱炎がオスよりも多いといわれています。

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