猫のオシッコや猫のトイレについて、飼い主さんが日ごろ感じていることをQ&Aでご紹介します。
オシッコを病院に持って行きたいのですが、どうやったら上手に採れるのか教えてください。病院での採尿は猫にとっては大変なようなので、できれば猫がオシッコをしたときに採ることができれば、と思っています。(サクラさん)
システムトイレなら、猫にストレスをかけず、採尿もカンタン!
一般的に、検査や診察のために動物病院で採尿するときには、猫の膀胱を圧迫したり、尿道にカテーテルを入れたり、膀胱に針を刺して採取する膀胱穿刺などで行います。膀胱にたまっているオシッコを直接採ることができるので、雑菌などに触れていない新鮮な状態で検査することができますが、猫には多少、ストレスや負担がかかります。自宅で自然尿を採取できれば、猫に大きなストレスをかけることもなくなりますし、定期的にチェックもできるようになります。自宅でオシッコを採る方法としては、次のようなものがあります。
1)お玉を使って採る
トイレで猫がオシッコの体勢になって腰を落とした瞬間に、後ろからお玉をおしりの下に差し入れてオシッコを採ります。
2)ビニールシートの上で採る
猫砂の上にビニールシートを敷き、その上にしたオシッコをスポイトなどで採ります。
3)スノコ式トイレトレーを活用する
砂を通過したオシッコが下のトレーにためられるスノコ式トイレの場合は、トレーのマットやシートはずしておき、そこにたまったオシッコをスポイトなどで採ります。猫は普通にオシッコをすればよいので、一番負担がかからず、採取も簡単です。
いずれの場合も、採取したオシッコはしっかり蓋が閉まる容器に入れます。動物病院にオシッコを持って行くときは、当日のオシッコをなるべく新鮮なうちに届けるようにしましょう。
(回答:井本動物病院 院長 井本 史夫先生)
昼間、猫1匹で留守番をさせていますが、飼い主がいないと排泄をしません。朝、排泄していないときでも、私が帰ってきた際に(夜遅くでも)排泄の形跡がありません。普通は何回くらいするものなのでしょうか?
去勢手術で病院に1泊したときにも、一度もしませんでした。(milkterさん)
排泄の回数は個体差。むしろ排泄のリズムに気をつけて。
「排泄の回数が少ない」ことに関して、悩まれている飼い主さんは多いようです。猫の場合1日に平均2~3回の排尿、1回は排便するのが理想的ですが、個体差がありますのでmilkterさんの愛猫が1日1回の排尿・排便であったとしても、健康診断上問題なければそれでよいと思います。排泄の頻度には個体差があります。
排泄する尿や便の量は、飲む水の量や食事に含まれる水分、食事の質による消化率などで異なります。例えば当院の患者さんで、いつも2日に一度の排便で調子がいい、という猫を知っています。
排泄の頻度が低いことよりも、低いなりにそのリズムが一定であるかどうかに気をつけてあげてください。いつもより長時間排泄が見られないときは、尿道閉塞や便秘、巨大結腸症の危険もありますから、苦しそうなそぶりがないか、食欲や飲水量に変化がないか、嘔吐がないか確認し、早めにかかりつけの病院で診察を受けて下さい。
(回答:元 ACプラザ苅谷動物病院 市川橋病院 溝口 期子先生)
6歳の雑種(オス猫)です。急にオシッコの色が濃くなったのですが、本などには「色が薄いと病気の可能性がある」と書かれていたりはするのですが、色が濃いことに関しては書いてないのです。色みはカボチャの煮物のような、茶色に近い濃い黄色です。(ぽんこさん)
1日も早く、かかりつけの病院で診察を
自宅でわかる尿の変化には、尿色、尿臭、尿量、濁りがあります。尿色には赤色尿、茶褐色尿、緑色尿、薄く尿臭がしない尿、混濁した尿があります。赤色尿には血尿、血色素尿、茶褐色ならビリルビン尿症、緑色ならばミオグロビン尿症、混濁してると多量の脂肪滴、結晶、膀胱炎、多量で薄い尿では飲水量が増している可能性があります。
カボチャの煮物のような茶色の場合、ビリルビン尿、あるいは重度の膀胱炎で、尿が膿のようになっている可能性が高いでしょう。猫では尿にビリルビンが出ていれば、肝疾患か溶血性貧血が疑われます。
眼の白目を見てください。黄疸、もしくは可視粘膜色が白く、貧血が出ているかもしれません。考えられる病気には胆管肝炎、胆道系の閉塞、溶血性貧血、細菌性膀胱炎などがあります。手遅れにならないうちに、1日も早く、かかりつけの病院で診察を受けてください。まず、尿検査、血液検査、腹部レントゲン検査、腹部エコー検査、状況により肝生検が必要となります。
(回答:千葉県獣医師 内田恵子先生)
8カ月のオス猫です。インターネットの里親募集で譲り受けましたが、前の飼い主さんが使っていたトイレの砂じゃないと嫌がります。でも、この砂は猫の足にくっつくため、部屋中が汚れてしまいます。最近、トイレの砂を1度変えてみたのですが、新しい砂が気に入らないらしく、トイレに入っても用を足してくれません(泣)。我慢をして膀胱炎になってもかわいそうなので、諦めて以前使っていた砂に戻しました。掃除が大変なので、できれば新しい砂を使わせたいのですが、どうしたらうまく切り替えられるでしょうか。
(匿名希望さん)
根気良く&トイレは清潔に
猫の性格によっては、トイレを替えても、まったく気にしないで使ってくれる場合もあります。ちなみに当院の猫ミッキーは"気にしないタイプ"なので、以前は新聞紙を使っていましたが、今は「ニャンとも清潔トイレ」を愛用しています。しかし一般に、猫はこだわり屋が多く、慣れたものを変えたがらない傾向があります。ご相談者の場合も、少し時間がかかるかもしれませんが、以下のような方法を根気よく試してみてください。
1.砂を徐々に替える
いきなり完全に切り替えると、猫もびっくりするでしょうから、最初は今まで使っていた砂と新しいものを5:1の割合で混ぜて使わせてみましょう。そして、徐々に新しい砂の比率を増やして、最終的に全部切り替えるようにします。
2.トイレの再しつけをする
寝床以外の場所を、新しいトイレ砂(または、チップなど、砂に準ずる素材)で覆った囲いに入れておきます。すると、砂の上で排泄せざるを得なくなるので、砂=排泄というつながりが形成されやすくなります。それから、徐々に砂で覆ったスペースを狭くしていきます。砂で覆わなくなったところに、ごはんを置くのもいいでしょう。最終的には、側面の低いトレーに砂を入れ、後で適切な容器に変えます。
3.猫自身に選んでもらう
部屋の中が汚れにくい砂を何種類か用意して、その中で猫が気に入る砂を選ばせてみるのも、ひとつの方法です。
なお、猫はきれい好きなので、トイレが汚れていると、別の場所で排泄してしまうことがあります。お掃除は頻繁に行って、トイレの切り替えがスムーズに進むように配慮してあげてください。
(回答:千葉県獣医師 内田恵子先生)
11歳のオス猫です。先月、家族旅行のため猫を3日間ほど動物病院に預けたら、それ以来、スプレー行為をするようになりました。この1カ月、食事の量が減り、体重も激減しています(通常時12kg、現在8kg)。以前から年に1度は、家族旅行のため、1週間ほど動物病院に預けることがありましたが、8年ほど前に去勢したこともあり、今までは、スプレー行為が長く続くことはありませんでした。しかし、今回は1カ月近くに及んでいます。どのように対処すればいいのでしょうか。通常のおしっこに比べ、においがかなり強いため、その対処にも困っています。(トム&ジェリーさん)
病気の恐れがあるので、病院へ!!
飼い主の旅行などによる不在から、スプレー行為が起こることは確かにあります。しかし、トム&ジェリーさんの場合は、今までも年に1回くらいは預けていらっしゃったとのことですので、飼い主の不在がストレスとなって、スプレー行為が起きたとは考えにくいのではないでしょうか。
それよりも何よりも、食欲がなく、1カ月の間に体重が4kgも減っていることを考えると、愛猫の異常な排尿行動は、スプレーというより、何らかの病気が原因である可能性が非常に高いと思われます。そもそも、猫の体重は、成猫でも4~5kgが限度で、体重が12kgあったこと自体も、かなりの肥満で問題ではありますが、それが激減したということは、猫のからだにとっては異常なこと。尿がにおうということですので、尿路感染症の疑いもあります。一刻も早く、動物病院へ行って、検査をお受けください。
病院で異常が見つからず、スプレー行為が疑われる場合は
スプレーは、縄ばりが侵されそうな場合だけでなく、猫の欲求不満のために起こる場合もあります。例えば、人や猫を含む、新しい動物が家庭に入ってきたときや、飼い主の旅行などによる不在、環境の変化、また、猫の注意をひこうとする行動に飼い主が応じなかったりしたときにも起こります。多頭飼育の場合、トイレの掃除が不十分なときにも、トイレ以外での排尿の原因になります。また、トイレの素材が変わったり、置き場所が食餌の場所や寝床に近かったりして、トイレが気に入らない場合もあります。これらから考えて、スプレー行為だと判断される場合には、いつ、どこで、どんなときにしているのかを観察して、まずはその原因を取り除いてあげてください。
スプレー行為をしている場合の対策は?
現在、スプレー行為をしている場合、すでに尿をかけられたところは、水やアルコールで拭いたり、脱臭スプレーを吹きつけたりして、においが残らないようにしてください。いつも決まって汚される場所がある場合は、しわにしたアルミホイルを敷く、粘着テープを貼る、水鉄砲でびっくりさせるなど、猫が嫌がることをして、そこで排泄するのが嫌になるようにします。いつもする場所に、その猫の食器やベッドを置くという方法もあります。人が頻繁に利用する通路や、寝床や食餌場所に近いところに、トイレが置いてあると、猫はそのトイレを嫌がるようになってしまいます。また、トイレに不備はなくても、特別お気に入りの排泄場所があるということも考えられます。その場合、そこには入れないようにして、他の場所に行くように仕向けます。猫がトイレの場所を気に入るように、お気に入りのカーペットを小さく切って、トイレのそばに置いておくという手もあります。愛猫のトイレ以外での排泄にお悩みの方は、ぜひお試しください。
(回答:元 ACプラザ苅谷動物病院 市川橋病院 獣医助手 大石 節子さん)
10歳のペルシャ(メス)です。2カ月ほど前に膀胱炎になりました。薬を飲んで治りましたが、その後また再発し、それまで飲んでいた薬より少し強い薬を飲ませて、今のところは症状が治まっています。ただ、ひとつ心配なのは、それまでとおしっこを出すときの姿勢が変わってしまったことです。以前はふつうに座ってしていたのが、しっぽを持ち上げて、トイレのまわり中にひっかけるようになってしまったのです。膀胱炎になったことで、おしっこの出方が悪くなってしまったのでしょうか。また、人間と同じように、猫の膀胱炎もクセになってしまうのでしょうか。(スモモさん)
猫の膀胱炎も、よく再発する
猫の膀胱炎は、膀胱炎の原因をできる限り確定し、適切な治療と予防を行わなければ、再発を繰り返すことがよくあります。10歳を超えているということですので、猫の泌尿器症候群、膀胱結石、腎盂腎炎、腎結石などを調べなければなりません。また、尿検査、レントゲン検査、超音波検査、必要に応じて、尿の培養検査、泌尿器系の造影レントゲン検査、全般的な血液検査を受けることもあるでしょう。根気よく治療を続けることが大切です。現在、薬を飲ませていらっしゃるとのこと。薬は勝手にやめず、必ず獣医師がいいというまでは与えるようにしてください。
排尿姿勢が変わった原因は?
排尿姿勢の変化については、2つの原因が考えられます。ひとつは、膀胱炎を発症したことから、痛みによる記憶で排尿姿勢が変わってしまったということ。もうひとつは、テリトリーを示すスプレー行為です。スモモさんの猫が多頭飼育で、かつ、治療のために入院をしたとか、猫のトイレの材質が変わったり、トイレの位置が変わったりしたといったことがあれば、テリトリーを主張するための行為かもしれません。膀胱炎がまだ治っておらず、排尿姿勢がおかしいのならば、病気が完治すれば、行動も元に戻ると思います。
(回答:千葉県獣医師 内田 恵子先生)