病気になった猫ちゃんの約2頭に1頭が「泌尿器系」の病気です。猫にとって宿命ともいえる泌尿器系の病気は、早期発見が大切なポイント。そこで、愛猫の「尿検査」がどの程度実施され、どんな課題があるのか「猫の泌尿器ケア研究会」では、猫オーナーと獣医師にアンケートを実施しました。
【調査概要】
<猫オーナー>
2012年7月 花王株式会社調べ
調査方法:インターネット
対象者:猫飼育者3,207名
対象地域:全国
<獣医師>
2012年8月~10月 花王株式会社調べ
調査方法:アンケート調査
対象者:獣医師53名
対象地域:全国
健康管理に欠かせない大切な検査であるにもかかわらず、猫オーナーの回答は、「尿検査をしたことがない」が約65%。健康時に「定期的に尿検査」(※)をしているのは、わずか7%強という結果に。
※「半年に1回」「1年に1回」「2~3年に1回」尿検査をしている場合。
さらに「定期的な尿検査」の実施率を、過去に泌尿器系の病気にかかったことがあるかないかで、比較してみました。病気経験がある方が、再発防止のために、定期的な尿検査の実施率は高まると思われますが、実際には15%程度。尿検査に対する意識は、さほど高いとは言えない結果になっています。
一方、獣医師は尿検査をどのように位置づけているのでしょうか?
猫の病気の早期発見や健康管理のために、獣医師の9割以上が、「身体検査」や「血液検査(CBC、生化学検査)」と並んで、「尿検査」を重要な検査と考えています。
「猫は泌尿器の病気が多く、尿検査はとても重要。 自宅での採尿を習慣にしたいですね」
元苅谷動物病院 統括院長
内田 恵子先生
猫にとって「尿検査」はとても重要で、血液検査だけでは正確な診断が下せないことも多いのです。 特に、猫の宿命ともいえる「慢性腎不全」は、最初に兆候が現れるのが、尿比重の低下です。血液検査で異常が見られるのは、腎機能が3/4以上も損なわれてから。腎不全の早期発見に尿検査は欠かせないといえるでしょう。
動物病院では、膀胱に注射針を刺して膀胱内の尿を直接採取する「膀胱穿刺(ぼうこうせんし)」という方法で検査をすることが多いのですが、これは、エコーで膀胱に異常がないことを確認したうえでしか行えませんし、検査のために度々膀胱を刺さされるのは、飼い主さんにとっても抵抗が大きいでしょう。
自然に排泄された尿での検査でも、アルカリ性に傾いてきたとか、尿比重が下がってきたといった傾向は把握できます。
日頃から、自宅で尿を採り、病院に持参して検査してもらうことが習慣化できるといいですね。
例えばシステムトイレを利用して尿を採る場合、トイレを洗い、新しい猫砂(固まらない/撥水タイプ)を入れたタイミングがおすすめです。スノコの下にシートを敷かないことで、尿が溜められ、オシッコチェックを簡単に行うことができます。
※猫砂(固まらない/撥水タイプ)を通過しても、尿成分が変化しないことが望ましいです。
尿検査の際には、「自宅での採尿」が必要になることもありますが、うまくできているのでしょうか?
猫オーナーの自己評価によれば、「あまりできていない」「全くできていない」を合わせて、約3割がうまくできていない状況。対して、獣医師の評価も、「あまりできていない」が4割と、「採尿が難しい」と感じている猫オーナー、獣医師が少なくはないことがわかります。
自宅での採尿には様々な方法がありますが、猫オーナーに、自分が行っている方法と、それでうまくできているかどうかを尋ねてみました。
結果、最も成功率が高かったのが、「システムトイレ」を利用した場合で、「よくできている」「ほぼできている」を合わせて84%の成功率。
7割以上の獣医師が、「採尿しやすいトイレを猫オーナーにお勧めしたい」と答えていることからも、採尿方法として、「システムトイレ」は有効と考えられます。
元苅谷動物病院 統括院長
内田 恵子先生
自宅で簡単に採尿ができるシステムトイレを上手に活用して、尿検査を特別なことではなく、日常の健康ケアの一環として取り入れていただきたいと思います。猫を動物病院に連れて行くのが大変な場合も、尿だけでも持参できると良いと思います。
定期的に動物病院に尿を持っていくことで、病院との連携も深まりますし、愛猫の体質を知ることで病気の予防ができ、何よりも病気の早期発見につながります。